Monthly Archives: 8月 2017

6.1 新たに定められた規格要求事項とリスク及び機会について

2015年の改正で新たに追加された「6.1リスク及び機会への取組み」の冒頭部分である「6.1.1 一般」には、リスク及び機会の決定におけるプロセスの確立や実施、そして維持について定められた内容が記されています。

実はこの6.1.1 一般」は、企業のISO担当者にとって最も悩ましい細分箇条と言われています。というのも、条文内ではリスク及び機会について厳密な定義がなされておらず、非常に自由度の高い解釈が可能であるからです。

 

その条文ですが

6.1.1 品質マネジメントシステムの計画を策定するときには,組織は,4.1項で示された課題、および4.2項で求められた要求事項を考慮し,かつ、次の事項のために取り組むために必要なリスクおよび機会を明らかにしなければならない。

a) 品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成できるという確信を与える。

b) 望ましい影響を増大する。

c) 望ましくない影響を防止又は軽減する。

d) 改善を達成する。

と規定されています。

そもそも、ここで言われているリスク及び機会とはどのようなものでしょうか。

一般的にリスクとは企業にとってマイナスの影響を与える要因を意味し、機会は逆にプラスの影響をもたらす要因であると言われています。

もちろん、このような一般的なリスク及び機会はもちろんのこと、環境マネジメントシステム上では次のような事態もリスク及び機会としてとらえる必要があります。

① 気候変動による業績への影響

② 労働者の言葉の壁などに起因する業務手順の理解不足

③ 新技術導入における公的支援制度

④ 経済的な制約などによる環境マネジメントシステムに充当する資源の欠如

このように非常に幅広い内容を網羅する必要があるという解釈も可能であるため、前述の通り悩ましい思いをせざるを得ない状況というわけです。

さらに、ここでの決定は後段の「6.1.2 環境側面」~「6.1.4 取組測定」へとつながる要求事項となっているため、多方面からの観点で議論し策定することが求められます。

また、潜在的な緊急事態を決定することも定められています。これは2004年版の「4.4.7 緊急事態への準備及び対応」に該当する部分です。例えば可燃性液体や貯蔵タンクなどの環境ハザードの要因となるもの、あるいは隣接した施設における緊急事態などがこれに該当します。つまり、これらの緊急事態についても同様に計画あるいは予測しておく必要があるのです。

 

具体的な企業側の取り組みとしてまず優先すべきは、取り組む必要があるリスク及び機会の決定作業となります。既に毎年CSRレポートなどを作成している企業の場合、ステークホルダーなどの声を踏まえてこれらの作業を行っているケースもあります。また、経営戦略や中長期計画などにリスクや機会を明記しているケースもあるでしょう。

こうした資料を掘り起し、加えて自社の経営に関するSWOT分析などを取り入れつつISO14001に準拠したマニュアルへと落とし込んでいく作業が必要です。

Category: ISO

5.3 実態に即した組織の役割と責任が求められる

2015年に改正されたISO14001内では、「5.3 組織の役割,責任及び権限」において環境マネジメントシステムを自社にて効果的に運用するための責任及び権限について規定されています。

2004年版からの大きな変更点は、「環境管理責任者」という固有名詞が削除されたこと。一見後ろ向きの改定に思われますが、この名称削除には実態に即していない「名ばかり環境管理責任者」が横行していたという背景があります。

 

その話をする前に、基本的な事項である改正後の条文に注目してみましょう。

条文では、「5.3 組織の役割,責任及び権限」として、

トップマネジメントは、関連する役割に対して、責任及び権限が割り当てられ、組織内に伝達することを確実にしなければならない。

 トップマネジメントは、次の事項に対して、責任及び権限を割り当てなければならない。

  1. a) 環境マネジメントシステムが、この国際規格の要求事項に適合することを確実にする。
  2. b) 環境パフォーマンスを含む環境マネジメントシステムのパフォーマンスをトップマネジメントに報告する。

と定めています。

これは2004年度版の4.4.1に相当する内容です。2004年度版では、上記に加えて特定の管理責任者を任命することを要求していました。つまり、これまではすべてのISO14001認証企業において、環境管理責任者を選任しその任に当たらせることを求めていたのです。

その結果どうなったか、というと、多くの企業で現場の業務を知らずに責任ばかりを持たされる環境管理責任者が選定され、制度が形骸化するようになったのです。

例えばある企業では、環境マニュアル上において本社の総務局長が環境管理責任者と位置付けられていました。しかし、実際の業務における環境管理の指揮命令系統は、会社のトップと各工場長によって構成されており、総務部長はオブザーバー的な位置づけでした。マニュアル上の責任者である総務部長は、実は環境に関しては何の権限も持たない立場だったのです。このように、「制度上必要だから」という理由で実態に即さない環境管理責任者の配置が問題視されており、今回の改定によりその問題点の改善策が反映されたとみるべきでしょう。

今回の改定では環境管理責任者の任命は必須事項ではなくなりました。その代わりに実態に即した組織の役割と責任がより一層求められることとなったのです。

 

具体的に各企業において留意すべき内容を以下ご説明します。前回のトップマネジメントの回でもご説明した通り、環境マニュアル作成時に

① 環境組織図

② 管理責任者の役割

③ 内部監査責任者の役割

④ 部門長の役割

⑤ 従業員の役割

を明確に規定することが必要です。

また、実際の指揮命令系統上に環境管理責任者を選任し、各組織や社員の役割と責任を遂行する旗振り役として機能してもらうことも大切です。

その際、環境マネジメントシステムがISO14001の規格要求事項に適合することを確実にすることや、環境マネジメントシステムのパフォーマンスをトップマネジメントに報告することを各階層に義務付ける必要もあります。トップマネジメントとしても、環境管理責任者に丸投げするのではなく、責任を持って環境マネジメントシステムの運用に携わることが必要であるということです。

Category: ISO